2017調査研究発表会

◆ 調査研究発表会の開催(平成2 9年度)

住生活月間協賛で下記の調査研究発表会を東京で2回と大阪で1回実施した。

また、発表者を囲む会も同時に開催し、内容の理解向上と参加者間での交流促進を図った。


・東京会場

【日 時】 平成29年10月6日(金) 18:00~20:30

【会 場】 東海大学校友会館(霞が関ビル35階)

【内 容】

(1)「同潤会江戸川アパートメント 建替えとコミュニティ」

<発表者>

太田 知行(東北大学名誉教授(元管理組合理事長))

関根 定利((一社)マンション再生ナビ代表(元旭化成開発事業部長))

<概要>

この報告書の目的は、次の二つである。

同潤会江戸川アパートメントの建替えは、何回もの挫折を繰り返し、結局、約30年を要しているが(同アパートメントの生活協同組合理事会が建替えの議論を開始したのが昭和47年、建物取壊し、敷地更地化が行われたのが平成15年)、この経過を、既存の研究、資料、関係者からの聞き取りにより可能な限り具体的に明らかにし、何回もの建替え計画が挫折し、最後に、旭化成との建替えが成功した理由はどこにあったのかを考察すること。

昭和22年、同潤会江戸川アパートメント賃借人間に成立した、同アパートメントの管理を目的とする地縁共同体(「アパート共同体」)は、その後、同アパートメントの住 戸の賃借人への払い下げ、区分所有法の制定により、変質して行くが、建替え時にも同アパートメントに居住していた区分所有者、建替え時には同アパートメントから転居 していた区分所有者+間の人間関係は、さまざまな形で残っており、建替えの実現に影響を与えたこと。

本報告書が、マンション建替えに関する今後の立法、法解釈、実務になんらかの貢献することができれば、われわれにとり望外の喜びである。


2)「ドイツにおける少子高齢化と都市縮小化対応の郊外居住政策の調査」

<発表者>

矢作 弘(龍谷大学教授)

小畑 晴治 ((一財)日本開発構想研究所理事)

<概要>

10年前から行ってきた、ドイツの都市再生・居住地再生の関連調査は、今回で3度目になる。今回の調査で一連の縮退都市政策を俯瞰しまとめることができた。矢作弘座長には、暮らしの風景・都市の風景として観察し、果敢な政策を打ち出しながら奮闘している状況をまとめて頂いた。川村委員(広島経済大)には、欧米諸国の先進事例に照らしてドイツの先進性を理解するための参考情報を頂くことができた。

21世紀に入って、ドイツも日本と同様の少子高齢化問題、グローバリゼーションの問題、そして現代社会における家族関係の希薄化問題にも直面する中での政策の状況が見えてきた。

前回の調査で気がかりになっていた「フェライン」に関して、その伝統的経緯と現在について三重大学名誉教授石田正昭氏に講演を頂いたことと、「家族政策としての“多世代の家”」について、城西国際大の魚住明代教授に講演を頂いたことで、より奥行きのある情報が得られた。

また、DAADドイツ学術交流会の協力を得て、研究会メンバーとドイツ人建築家ルドルフ・トイカ氏・DAAD関係者を交えてのワークショップを行い、難民問題を含むドイツの最新動向に関する意見交換を行った。


・大阪会場

【日 時】 平成29年10月18日(金) 18:00~20:00

【会 場】 ホテルモントレ ラ・スール大阪

【内 容】

「大阪長屋の保全活用とネットワーク形成に関する研究(その2) 」

<発表者>

藤田 忍 (大阪市立大学院大学教授) 他

<概要> <概要>


大阪の古い長屋が残っているまちでは、やる気のある長屋の家主、センスの良い入居希望者をつなぐことにより、家主の経営が上手く行き、入居者の暮らしや商売が始まり、まちににぎやかさを取り戻すための手段の一つとして、大阪長屋が使われ、長屋と長屋暮らしの価値が再認識され、やる気のある長屋の家主の決断により、大阪長屋の保全活用が進むことになる。

昨年の研究会に引き続き、(1)大阪長屋、長屋地区の特徴・動向・予惻を、東住吉区へのヒアリングと長屋地区のケースタディ、長屋パトロールにより、(2)大阪長屋をめぐる法制度、行政施策、構造の課題を有識者の講演により、(3)長屋の耐震補強のための設計・施工の取り組み、生活上の課題と可能性に関しては研究会委員により研究を行った。

併せて、大阪長屋が単なる物としての不動産情報に留まらず、改修後、入居後の生活が実感できる生き生きとした長屋情報(創造的不動産情報)の発信が重要となることから、ネットワーク形成の社会実験の仕掛けとして、オープンナガヤスクール、オープンナガヤ大阪2016を実施した。


・東京会場(第2回)

【日 時】 平成29年10月27日(金) 18:00~20:30

【会 場】 東海大学校友会館(霞が関ビル35階)

【内 容】

(1)「ソーシャルビジネス・コミュニティビジネスによる共助プロジェクト推進に関する研究」

<発表者>

澤登 信子(株式会社ライフカルチャーセンター代表取締役)

鶴野 美代(株式会社ライフカルチャーセンター研究員)

<概要>

前年度調査研究の結果、「共助」についての合意はほぼ形成され、すでに個人、グループ、NPO、企業など多様な主体が、有償から無償まで様々な活動に取り組み、ま た国や地方自治体も、共助社会形成をめざす施策を推進しつつあることが明らかになった。今後は、「共助」の仕組みづくりのために、適切な場の設置と魅力的なプログラムの開発が不可欠である。そこで今年度は、以下の手法で報告書をまとめた。

<1>事例紹介と解読

地域の拠点づくりや絆再生に取り組む先進的な事例を紹介し、そのポイントを解読することによって、今後の方向性を提案した。

<2>空き家・空き庭・空き地活用に向けて

共助プロジェクトを継続するためには、安定的な場が重要である。また今日、空き家対策が緊急課題となっている。そこで両者を結びつけ、空き家・空き庭・空き地などの活用方法を提案するため、まず今年度は、現状及び対策に関する基本的な整理を行った。

上記結果をふまえて、来年度の課題として、①空き家・空き庭・空き地など<都市型コモンズ>の再整理、②集合住宅やニュータウンにおける共助型プロジェクト試案づくり、③「空き家にしない」ための仕組みづくり、の3点を掲げた。


(2)「首都圏における大規模ニュータウンの現状と課題」

<発表者>

会津 光晨(NPO法人 まちナビ倶楽部ニュータウン部会長)

中村 克巳(NPO法人 まちナビ倶楽部前理事長)

<概要>

本調査は開発面積が概ね1,000haを越える大規模ニュータウンについて資料収集や現地調査等を行ない、現状の把握や今後の課題について検討したものである。首都圏の代表的なニュタウン4地区(多摩ニュータウン、港北ニュータウン、千葉ニュータウン、千葉・市原ニュータウン)を対象とし各ニュータウンに関し以下の作業を行なった。

①計画概要の整理、②現地調査等とその記録整理、③地区の現状や特徴的事項の整理、④評価や課題の考察。

入居からの時間の経過や事業手法により地域の状況はかなり異なっており、初期に入居が行われた地域では高齢化が進み人口減少の傾向も出てきているが、後期に事業が実施された地域では比較的若い世代の居住者が多く活気がみられた。

今後の課題として①高齢化に対応しながら若い世代が住みたくなる街づくり、②公共公益施設や集合住宅の老朽化や陳腐化への対応、③広域拠点としての中心核の充実と近隣センター等の身近なサービス拠点の活性化、④良好な地域社会形成のための地域活動等に対する支援などが挙げられた。

各ニュータウンは概ね地区内各鉄道駅を中心に生活圏が構成されており、今後、郊外地域の再生の核として機能していくことが期待される。