調査研究発表会の開催(平成2 8年度)

◆ 調査研究発表会の開催(平成2 8年度)

住生活月間協賛で下記の調査研究発表会を大阪と東京で開催した。

また、発表者を囲む会も同時に開催し、内容の理解向上と参加者間での交流促進を図った

・大阪会場

【日 時】 平成28年10月11日(火) 18:00~20:00

【会 場】 ホテルモントレ ラ・スール大阪

〒540-0001 大阪市中央区城見2丁目2-22

【内 容】

「大阪長屋の保全活用とネットワーク形成に関する研究」

<発表者>

和田 康由(大阪長屋研究家、大阪市立都島工業高等学校)

小池 志保子(大阪市立大学大学院 准教授)

藤田 忍(大阪市立大学大学院 教授)

<概要>

大阪市には約1万戸の戦前長屋が存在している。とりわけ昭和一桁代は大大阪と呼ばれ、

日本一の経済力を誇っていた時代であり、この時期に建てられた長屋には門塀、玄関、前庭、

後庭をもったお屋敷風長屋、青銅の箱軒やうだつをもった長屋等、立派なものが多い。最近、

こうした長屋をお洒落なレストランやカフェ、雑貨店等に活用する事例が見られ、暮らしの文化

が豊かに展開されている。

一方で、大多数の長屋においては老朽化、耐震性・防火性、空家の増大といった問題を抱え

ており、居住者は住み心地に満足している反面、大きな不安も抱えている。対して所有者たち

は、残したいという気持ちを持ちながらも、手をこまねいている状態である。

大阪市大グループは、豊崎長屋を中心に耐震補強、改修による長屋保全活用モデルを作っ

てきた。さらに、長屋を多様な形で保全活用している他のグループとの交流も進め、ネットワー

クを構築しつつ、オープンナガヤという公開イベントを開き、市民へ大阪長屋の情報を提供して

きた。

本研究はこれらの成果を整理し、長屋関係者間の保全活用情報の交流と共有、ネットワーク

の拡大強化をすすめ、今後の大阪長屋の保全活用の課題と方向について検討している。

・東京会場

【日 時】 平成28年10月28日(金) 18:30~21:00

【会 場】 霞ヶ関東海倶楽部(霞ヶ関ビル35階)

【内 容】

(1)「フランスの都市再生・団地再生の最新動向と日本の取り組みへの示唆」

<発表者>檜谷 美恵子(京都府立大学教授)

小畑 晴治((一財)日本開発構想研究所理事)

<概要>

今から30年前、日野市南平の見晴らしのいい高台に、区画数54というささやかな規模の住

宅地が呱々の声をあげた。そこは造成から、道路、宅地、建物に至るまで一人の建築家がす

べてをデザインするという空前絶後の街になるはずであった。しかし見学者は全国各地から来

るが、物件を購入したいという客が来ない。やむなく一人の建築家がすべてをコントロールして

理想の街をつくるという構想は半ばで挫折してしまう。その街が今どうなっているのか、できた

当時と現在を比較するほか、住民がこの先駆的な街についてどのように評価しているのかを

調査した。また、街並みを重視して開発された他の事例を訪ねて、街並み評価を行った。

フランス関連の調査は、平成18年度の『フランス都市再生機構ANRU動向調査』、平成22

年度の『フランスの都市再生と都市政策の動向に関する調査』に続いて、3回目の調査となっ

た。フランスが、都市再生政策としてGPV(Grand Projet de Ville:都市重点プロジェクト)を掲

げ、郊外団地問題に本腰を入れるようになったのは20世紀末以降、2006年にはその注力の

ため都市整備再生機構ANRUを発足させ、2006年にはそれをソフト面で補強すべく『社会結

束機会平等全国機構ACSE』が発足している。

今回の調査では、一連の取り組みがどのように効果を発揮しつつあるのか、社会住宅の管

理人制度の歴史と現在の実態について関川 華先生から、地方都市の郊外や衰退地区にまで

LRTを延伸させながらまちの景観性向上と再生を図っている状況について塚本直幸先生か

ら、都市周辺部や郊外の荒廃マンションの再生の実情と社会的背景について寺尾仁先生か

ら、それぞれ報告を頂き意見交換して実情と実態の理解を共有することができた。5章で、ボ

ルドー市におけるANRUプロジェクト(都市再生事業)の直近の評価の報告を頂いた。

(2)「江東区0メートル地帯における地域コミュニティの形成に関する研究」

<発表者>澤田 初穂(一級建築士事務所有限会社プラウド取締役所長)

石橋 理志(一級建築士事務所有限会社プラウド)

<概要>

江東区0メートル地帯においては将来的に予測されている首都直下地震や河川上流域にお

ける大量降雨に際して、堤防決壊による大規模水害が発生する可能性が懸念されている。

江東区の0メートル地帯は危険な都市域であることを住民に理解してもらい、対応策を講じて

おくことが大切である。大規模水害に際しては平常時からの地域コミュニティのあり方が重要

な意味を持つことが理解できる。これらを踏まえ、良好な地域コミュニティが維持されていると

考えられる江東区大島地区及び周辺地域を検討対象地域として取り上げる。

(1)調査に当たっては行政サイドの資料を収集し江東区0メートル地帯の大規模水害時の対応

策を整理した、その結果、多くの課題が存在することが理解できた。

(2)地域モデルとして取り上げた大島地区等の地域コミュニティの実態を知るため、行政、区

民、町会長、自治会長、地元有力者等にヒアリングを行った。これらの結果を整理・分析する

ことにより、発災時に地域コミュニティの有効性、また、課題についての検討を行った。

(3)検討の最終段階で学識経験者にヒアリングを行い、その見識を取り入れ調査の有効性を深

めた。

(4)以上の成果を踏まえ、海抜0メートル地帯を有する他都市での大規模水害時におけるハー

ド・ソフトにわたる対応方策を提案した。